社会不安障害
社会不安障害は、不安を感じる状況において、不安や恐怖を感じ、赤面、動悸、震え、発汗、めまいなどを生じる疾患です。不安を感じる状況としては、他人に紹介されること、他人から批判されること、注目の中心になること、行動している様子を見られること、公の場で発言やスピーチをすること、権威のある立場の人に会うこと、公の場で話す・電話をかける・飲食する・トイレに行くことを見られる状況などが挙げられます。醜形恐怖を伴う場合もあります。不安が不合理とわかっていても不安感を抑えることができず、状況を避けるか苦痛を伴いながら行われます。症状が強い場合、「皆の前で恥をかいたらどうしよう」という予期不安が高まり、学校や仕事に行けなくなることもあります。性格的な要因に加えて、きっかけとなった出来事があることも多いようです。例えば、人の前で発表をした時に、声が上ずって赤面し、恥ずかしい思いをした経験から、皆の前でまた恥をかいたらどうしようと予期不安が起きるようになります。対人的な慢性の緊張、社会的な場面での強い不安、人にどう思われるかが怖い、人前で上手く振る舞えないなどの症状が始まった時期、強く自覚するようになった場面を探っていくと、原因がはっきりとしてきます。
治療について
緊張する場面では、抗不安薬を事前に服薬しておくことで、かなり緊張する場面でも乗り越えることが可能になります。これに加えて動悸や震えなどの身体症状に交感神経を抑える薬を使います。これを繰り返すことで、不安がコントロールされ、次第に緊張が和らいでいきます(段階的暴露療法)。更に、長期化していて予期不安が強く、生活が障害されている場合にはSSRIやSNRIなどの抗うつ薬も使われます。認知行動療法も有効で、これにより実際には自分が考えているほど周囲が否定的に評価してはいないと認識し、自意識が過剰な状態が解消され適応的な行動パターンを身に着けることができます。また日々感じている不安の内容を言葉にして表現することも大切です。自分の不安を、自分の言葉できちんと表現できれば、それだけで楽になります。これまでの「不安をかかえてきた自分」が理解でき、それがどこから始まったかが分かれば、症状は軽くなります。